今日は、“心に描くこと”の驚くべきパワーを話します。
1990年、ヴィクトル・フランクルは、カリフォルニア州アナハイムの7000
人もの聴衆の前で、自分の人生について語りました。
フランクルは、その講演の中で、ポーランドの収容所での“ある一日”のこ
とを語りました。
その冬の日、彼は、他の収容者たちとともに、寒空の下を行進させられて
いました。
重労働と栄養失調のせいで体調を崩していたフランクルは、急に激しく咳
き込みはじめました。
彼はしゃがみこんでしまい、監視人がやってきました。
監視人は、こん棒でフランクルを殴りながら、「すぐに立ち上がらないと、
死ぬまでここに放り出しておくぞ」と言いました。
立ち上がる気力も体力も残っていなかったフランクルは、一瞬、死を覚悟
し、地面にうずくまりました。
しかし、次の瞬間、フランクルは心の中で、ある場面を心に描きました。
彼が想像したのは、戦争が終わった後の“ある場面”でした。
彼が描いたのは、戦後のウィーンで演台に立ち、「死の収容所の心理学」と
題する講演をおこなう自分でした。
収容所での体験をもとにした講演に、聴衆が熱心に聞き入っています。
演台に立つフランクルは、過酷な状況に耐えうる人間と、そうでない人間
がいると論じていました。
そして彼は、こん棒で殴られ、立ち上がる体力が残ってなくて、一瞬死を
覚悟した日のことを話しはじめました。
「私は、皆さんに講演する今日の日を夢見て、立ち上がることができたの
です。監視人は、私を殴るのをやめ、私は歩き始めました。」
以上のように聴衆に語りかける自分をイメージしているうちに、現実のフ
ランクルも立ち上がることができたのです!
心に描いたイメージが、フランクルの気力と体力を引き出したのです。
彼は、収容所まで歩いて戻るあいだも、この講演のことを想像し続けまし
た。
そして、このすばらしい講演を終え、聴衆の拍手喝采を浴びているところ
を想像しながら、寝床についたのです。
そして数十年後、フランクリンのこの講演は、アナハイムで7000人の聴
衆の拍手喝采を浴びたのです。
問題にぶつかった時、原因分析ばかりやって、行き詰ってしまうことがあ
りますね。
そんな時は、問題が解決した後の未来をはっきりと描くのです。
その後で、問題が解決した未来から、現在に立ち返り、「その未来を実現す
るためには、どのようにすればいいか?」を考えるのです。
by野口